成長記録

気管軟化症と診断されて

我が家の一人息子おけは気管軟化症です。2019年末肺炎で入院しそのまま気管切開をして、人工呼吸器装着となりました。以下はその経過と私の気持ちです。

年末の最終の平日、息子のおけは何回目かわからない風邪がやっぱりいつまでも治らず、熱はないものの帰省しても大丈夫かな?また肺炎になっているんじゃないかなというような状態でした。そこでやはり胸部エックス線検査だけはしてもらおうとかかりつけ病院へ臨時受診しました。するとSpO2が96%から決して上がりませんでした。今ではこの数字程度では動揺しませんがこの当時は起きていてこの数字は怖いんじゃないと思い、入院で風邪の経過を見てもらうことにしました。

するとモニターを付けているとびっくり。息子は眠るとSpO2が70台くらいまで低下するんです。そこで酸素投与が始まりました。その後もモニターを観察すると、やはり入眠中に酸素化が悪くなりますが、起床時は何とか酸素化が保てている状態でした。

年末年始は主治医と会うことは難しく当番の先生が回診に来てくれて、酸素ボンベをもっての一次退院も勧められましたが、安全面をとって入院継続をお願いしました。年明けすぐ主治医の先生が病室に来てくれて、近々気管支鏡検査をしましょう、気管軟化症の可能性がありますねとお話されました。呼吸器内科医であるにも関わらず私は入眠中のみ起こる低酸素であったため完全に睡眠時無呼吸症候群(と鼻閉の合併)と思い込んでおり、まったく思いついておりませんでした。

気管支鏡検査を見た瞬間、挿管して欲しいと思いました。挿管してPEEPをかけないと空気が入らないやつだと。つまり家に帰るなら気切だと思いました。仕事はやめよう。この子には一般の保育園は酷だ。ママがついててあげな、と思いました。
この気管支鏡検査はもともと同席予定でなかったのですが、同席させてもらえて本当によかったです。夢に何度も見ますが。でも、この時から本当に私の中での仕事へのウェイトが下がりました。
他の検査は全然立ち会ってません。結果も聞いてないものもあります。なんちゅう親だって感じですが、仕事に行ってました。
気管支鏡も付き添うつもりではなかったので朝に顔だけ見て仕事に行きましたが、なんとなく付き添わなきゃと思い、また病院に戻っていました。
本当に立ち会ってよかったです。一生あの気管支鏡検査は忘れない記憶だと思います。うちの子は「ダウン症でちょっと気管支が弱いだけで病気ではない子」ではなく、「気管支になんらかの高度医療介入をしなくてはいけない疾患を持った子」ということを実感しました。

わかったので決断は早かったです。先生方から説明をいただいて翌日には気切を希望する旨を返事しました。反対する理由はありません。しかしそれと息子に侵襲を加える決断をしてしまったことを悲しむは別です。ごめんね。ごめんね。首に穴あけるのなんて嫌だよね。痛い痛いだよね。こんな可愛いさらさらのお首に傷つけるなんて、ごめんね。ごめんね。ママ丈夫に産んであげられなくて、こんなに気管支弱いのに何回も風邪引かせてごめんね。とても悲しくて泣いてばかりで、夫には強くなってと言われましたが、泣くのだけは許してもらいました。

(ここだけ当時の記載です)手術までお首にたくさんチューしようと思います。
挿管、人工呼吸器管理、気管切開も何度も患者さん・その家族に説明して実施してきました、こんな気持ちではなかったです。でも、医学的な判断で行うことなので、こういう気持ちになっている方が患者さんに危ないので申し訳なくはないです。息子の先生達にも別におんなじ気持ちで遠持ってもらいたいとかは思いませんし。でも、医療者側と家族、特に母はこんなに気持ちが違うんだとわかりました。こんな気持ちでサインしているんだと。

そして最大限早い日程で手術を組んでもらいましたが、それまでにやはり一度も泣かないなどは難しく徐々に状態も悪くなり、また発熱し、NHF(ネーザルハイフロー)での管理となりました。すると何度も何度も息継ぎして何とか飲んでいたミルクをぐびぐび飲みだしてやっと体重減少が止まりました。NHFの酸素濃度は経鼻カニュラとほとんど変わりなく、ほんの少しのPEEPでこんなに違うんだと、手術前に実感できました。それでも前日は仕事を休み、息子のメスの入っていない首を目に焼き付けました。

  • この記事を書いた人

おkら

呼吸器内科医。産後育休を取らずに仕事復帰したものの1歳を過ぎたころダウン症の息子に在宅人工呼吸器が必要になり保育園退園→介護休業→介護休業使い切り退職→研究職。いつか臨床に復帰したい。今の目標は息子に色々な経験をさせること。

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