保育園 医療的ケア

医療的ケア児、保育園に入園できました。

我が家の一人息子はダウン症です。そして、気管切開をし人工呼吸器を使用している医療的ケア児です。息子が保育園に通えるようになるまでには多数の試練と、そして多数の支援が必要でした。

現在、医療的ケア児の支援法が施行されるなど話題にはなってきていて環境整備も、なされてくるのでしょうが、依然地域差が改善されるには時間がかかることと思います。それに対し子供たちはどんどん成長します。私が行った工夫やアプローチがもしかしたらどこかの地域のどなたかの後押しになる可能性もあるかと思い記載します。

まず、ほかの地域でどのように医療的ケア児が保育園や幼稚園に入れたかを調べました。

  • 医療ケア対応をうたっている保育園(元麻布保育園とかフローレンスとか)
  • 姉兄が通っている保育園や幼稚園と懇意になり、直接園長先生から受け入れをOKいただく
  • 地域の市役所・区役所の職員と相談。

ちなみに気管切開(日中呼吸器は離脱)の子たちの入園経験のある地域は東京では調べた限りでは23区中10区でした。もう少しあるかもしれませんが、病院のソーシャルワーカー、訪問医、医療ケアコーディネーター、訪問看護ステーション、発達支援スタッフ調べの合算です。さらに2021年度4月からはもう1区増えて11区が気管切開児の保育園での受け入れ経験があるようです。実際に転居などを検討している方は連絡いただければ情報提供します。うちの区では気管切開はおろか胃瘻・NGチューブ・ストマも不可でした。一例も受け入れたことはなかったようです。区として前向きにとりくんでいるのは文京区・葛飾区・港区と聞きました。港区は幼稚園でも受け入れOKしているところもあるようです。

というわけで①で受け入れ困難とされた我が息子、そして②兄弟はいません、③なんでもかんでも無理無理の区なので、別の対策を練ることにしました。

もし可能ならば①②③の方法をおすすめします。

  • 受け入れ保育園探し

まずは園長先生に交渉。なぜなら区の職員への評価は関係者みな一様に『暖簾にうでおし』『やる気がない』だからです。かくゆう私も以前ばちばちやってしまった経緯あります。

さて園長先生に相談するにも私は知り合いの園長先生なんて一人もいないです、そこで、

地域の開業医であり、保育園の園医をされている小児科の先生方にどうしたらいいか聞いてみました。K先生から『○○園の園長先生は医療ケア児も受け入れていかなければいけないよねって考えの方だと思うよ』と教えてくれました。もちろんこの小児科のK先生は初対面ではなく、インフルエンザの予防接種に行った際や何ならメールでも何度かやり取りをしたことがあり、(うちの区の保育園の現状にどうお考えですか見たいな突撃メール)、我が家のことは気にかけてくれていましたので、診察時間外に相談の時間を設けてくれて相談したところ、園長先生が医療ケア児の受け入れに前向きな園を教えてくれました。

※医療的ケア児はいわゆる大きな入院施設のある病院へ定期受診がありそこが主治医であることがほとんどと思いますが、いろんな地域とのかかわりや就園・就学相談のためにも地域にかかりつけ医をもっておく方がいいかもしれません。ちょっとした皮膚のトラブルや予防接種(シナジスは無理かもしれませんが)などもお願いできるとかなり楽だと思います。私は同僚からの口コミで探しましたが、主治医病院からの紹介状をもっていくとなお親切でいいなと思います。

  • また医療ケアの実際の保育園での手順(案)をかかりつけ医や主治医と相談しました。

日中の人工呼吸器装着が必須でない。

吸痰は適宜必要。→喀痰吸引研修を求められた場合の登録研修機関の確認。

気管カニューレの事故抜去時の対応

A)①園の看護師が挿入②挿入できたらDr.call(我が家の場合は母に連絡)

B)①園の看護師が挿入②挿入困難であれば園の目の前の主治医病院救急外来へ駆け込むまたは往診医callまたは親callで一番早く息子と接した医師が挿入 etc

その他ST指導の下スピーチバルブでの経口摂取の練習をして経口摂取可能であることを確認。食事時はスピーチバルブで摂取可能。

そんなわけで現場の保育園がOK、主治医もかかりつけ医もOKといっている、療育のスタッフも推奨という状況で我が在住区の保育課へ保育園の申請をしに行きました。

  • 保育課と相談

すると、

区 無理。ともかく無理

私 何が無理なんですか?現場も主治医もOKといっています。

区 制度がないです

私 どんな制度があれば受け入れ可能ですか

区 無言

私 制度を作って欲しいわけではないんです

区 ともかく各所お問い合わせして確認します

となってその日は終了

翌日(電話で)

区 保育課の担当ではない

私 どういうことですか

区 担当は発達支援センターのAさんです

私 その方はもともと知っています。保育園に入園する為に相談していくための窓口の方は誰になりますか。

区 保育園への入園はできないので担当はいません

私 申請もさせてもらえないということですか

区 現状では受理できません

私 本気で言っていますか

区 保育課の総意です

と、ちょっと思い出して書いているだけで少しぷるぷるしてきましたよ笑

そんなわけでわたくし大激怒です。発達支援センターのAさんに電話しました。

「障害者差別だ、適切な対応を求める。保育課の課長またはその上の部長より、『区民の未就学児が医療的ケア児だから保育課の担当ではない』はいったいどういうことか、正式な回答をもとめます。なければ訴訟です。」

ちなみにAさんはいい人です。もともと発達支援センターでリハビリを受けている息子の様子を時々覗きにきてくれ、息子が歩行器を押し始めた時に私が撮った動画にAさんの歓声と拍手が入っているくらい息子をかわいがって心配してくれる方です。

そして区の保育課課長から電話がかかってきました。

人生最大の怒りを感じたわたくしは電話で正式な話をしたくない、文書でお願いしますとお伝えしました。しかしその際に、課長から直接息子の様子をもう一度聞かせて欲しいと言われ、今までの経緯や現状をお話し聞いてもらうことができました。(ここで初めてダウン症って伝わった気がします)

なのでちょっとどんな文書が来るか期待していました。けれど実際はやっぱり医療的ケア児の子とは受け入れられないという内容の文書が届きました。

私は息子を拒否されたままは考えられなかったので色々方法を練りました。

A)厚労省など官僚につてを探す。

しかしですね、結局地方分権が進み、かつ東京都という最大の力を持っている地方には国の方は特に何かできるわけはないようで、アドバイスだけもらいました。まずは東京都と区の『行政相談窓口』に同時に相談に行くようにと、そして現状を書いた文書を添付してどこへ話をもっていけばいいかと打診する。「いつ、どのセクションからどのような回答があったかは記録する。できれば電話でなく、メールか紙の文章がよい」とのことでした

B)医師会から保育課の意図を探る。

我が職場も同じ区にありますので医師会から何かここまで区がかたくなに嫌がる理由を探せないかなと思い、アプローチしました。

C)区長への手紙を書く。

その他)療育施設・訪問看護師・訪問医・私の旧友などに多数多数伝え、何かないかと相談しました。

結局30-40人くらいには直接私から相談したと思います。なんとなく区の嫌がる理由だとか、市役所や県庁で働く友達にもアイディアをもらいました。

そして何より地元の開業医K先生とそこで働くスタッフの医療的ケア児母にアドバイスをもらいました。

K先生とスタッフと何回かミーティングをしながら,

送られてきた文書に記載のあった『区が医療的ケア児の保育ができない理由』に対する対策を立てました。それをパワーポイントにまとめました。ちなみにそのパワーポイントは多数伏字にしてありますが個人情報が丸出しです。連絡いただければお見せすることは可能ですのでもしご興味あれば連絡ください。

そしてそのプレゼン資料をもって、再度区役所に相談に行くことにしました。これでダメな場合は引っ越しをして、かつ区を相手に訴訟すると決めて行きました。(ちなみに私の実親は両親ともに引退していますが元々法曹界の人間ですので、100%勝つつもりで訴えると決めていました。もちろん当事者は息子とその親である私達です⦅あまりに過激笑⦆。親が言うには『気分も晴れなけりゃ、息子(孫)ためにもならないし、お金がたくさん請求できるわけでもないし、普通にあんたが働いた方が稼げるよ。でも訴えるというなら弁護士登録します。』との事でした。他には家族の会とか新聞社とかにもつてあるから持ち込みましょうと。)(ちなみにあまりに登場しない夫ですが、基本後方支援の人です)

で、区役所に再度言ってみましたところ。なんと!前向きに検討!!!!(ほんとのやつ!!!)

(20分くらいプレゼンした後に言われました。プレゼン必要だった?笑)

ということで今後は区と保育園と息子&保護者で実際に集まって調整していくことになりました(緊急事態宣言で延期になりましたが。。。)

結局まとめますと

  • 周囲の医療関係者・療育関係者・議員・ママ友などから医療的ケア児の受け入れに前向きな園長先生がいる園を調査する。(半年くらいかけて)
  • 医療ケアの状況やトラブル時にだれがどう対応するかなどのバックアップを、医師・訪問看護師などと相談しておく。
  • 役所の保育課に申請し理解を得る。

※医療的ケア児を保育園で受け入れることは国に推奨されていることであって、できないというのは遅れているということであり、早急に自治体は対応を迫られているということを理解していただく。

ということが大事だったようです。

私は専門職でやや仕事の選択肢が多かったこと、息子の体調が安定していたこと、法律関係・医療関係がよっぽど毎回専門家に聞かなくても網羅できていたことが今回何とかなった理由かと思いました。けれどそんな家ばかりではないわけです。もちろん。

なにもここまで親がやる必要がない世の中になって欲しいですし、この地域では息子という前例を生かして次につなげてほしいです。

さて結局まだあっちを向いていた矢印がこっちを向いただけでベクトルの長さは最小です。今後ベクトルが反対向きとはいかないけれど斜めをむいてみたり全く伸びなかったりあるかもしれません。けれど少なくとも保育園に迷惑が掛からない範囲でその相談の状況も記事にしていけたらなと思います。(記載終了時は慣らし保育終了くらいですので後日談また書いていこうと思います。)

こんなに長い文章におつきあいくださりありがとうございました。

  • この記事を書いた人

おkら

呼吸器内科医。産後育休を取らずに仕事復帰したものの1歳を過ぎたころダウン症の息子に在宅人工呼吸器が必要になり保育園退園→介護休業→介護休業使い切り退職→研究職。いつか臨床に復帰したい。今の目標は息子に色々な経験をさせること。

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