医者として 医療的ケア

気管切開児!固い痰対策!!!

気管切開をしている息子の痰が固くなると冬の到来を感じます。

そのくらい在宅での気管切開の管理って痰との闘いですよね。在宅小児のスペシャリストである、主治医も「在宅での人工呼吸器管理の一番のポイントは痰の管理です」と言っていました。

そこで今回我が家の行っている痰を固くしないために行っていることを紹介したいと思います。もちろんすべての方に当てはまるわけではないので自分のお子さんの主治医と相談してくださいね。

まず、痰が固くなるとどうしていけないのか

痰が固いと出しにくくそれにより、カニューレが閉塞したり、カニューレ内を空気が通りにくくなり呼吸がスムーズに行えなくなったりします。また、排出されずに気管・気管支にとどまったままの痰は細菌の温床となり、肺炎などの感染症につながったり、そのまま気管支を閉塞させ無気肺を生じさせたりする可能性があります。

つまり痰をためずに出すことが特に気管切開をしている子には大切です。喀出しやすいよう痰を柔らかくすることも同様に大事になります。

ちなみに一般の子より気管切開をしていると痰が固くなりやすいのは、人工鼻は鼻よりも加湿機能が落ちる、気管粘膜にある繊毛がカニューレにはない、そもそも咳嗽力が弱い子が多い、からです。

そこで実際行っている基本的な対策です。

①去痰薬の内服

カルボシステイン(ムコダイン)とアンブロキソール(ムコソルバン)の二つはいわゆる去痰薬で痰の排出をしやすくする薬剤です。決して痰を減らす薬ではありません。カルボシステインは痰そのものを柔らかくする薬で、アンブロキソールは気管粘膜を保護して痰の滑りをよくする薬です。気管切開をして人工呼吸器を使用していたり酸素投与しているお子さんはかなりの方がすでに処方を受けているのではないでしょうか。ジェネリックではなく先発薬の二つの頭文字をとって『ムコムコ』と小児科の先生は略したりするみたいです。

喘息のような傾向のある方にはロイコトリエン拮抗薬なども効果が期待できるかもしれません。

②カニューレの定期的な交換

気管カニューレは人体にとっては異物ですし、気管に存在する異物を除去する繊毛がありません。どんなに空気清浄をして、清潔に取り扱っても少しずつバイオフィルム(細菌が形成する膜)ができます。このバイオフィルムは耐性菌の温床になったり、さらなる痰の貯留を引き起こします。そのため閉塞や狭窄がなくても定期的に交換することが必要です。

③加湿の工夫

⑴人工呼吸器の加湿器の温度を上げる。回路を経由すると徐々に温度が下がり、水蒸気量が減る。(この設定は医師に任せてくださいね)

⑵回路内の結露を防ぐ・結露をこまめに除去する。回路に結露が生じていると回路の温度が下がり、水蒸気量が減ります。回路に直接冷気が当たらないように、梱包用のプチプチを巻いたり、回路用のカバーを作成したりする方も多いようです。我が家は鳥取大学医学部付属病院が企業と共同開発をした物を教えていただき購入しました。HPで購入申し込みできますFIT フィット 人工呼吸器回路カバー 製品ウェブサイト (hb-fit.jp)

⑶水分摂取を多くする。痰は気管・気管支の分泌物なので、体内の水分量が多ければやや痰の粘調度が下がります。冬こそ水分摂取に気を付けています。できれば午前中の水分摂取が体のリズム的にもよいとの事です。

⑷部屋を加湿する。冬は大気中の水分量が減るので湿度を上昇させる。我が家は温度湿度計を置いて、冬季の温度22~24℃、湿度40~50%目安に加湿器を動かしています。この目安値は病室内の温度湿度基準を参考にしています。

⑸お風呂に長く入る。これも部屋の加湿とほとんど一緒ですが、外出などで痰が固くなってしまった後は有益です。

⑹人工呼吸器・加湿回路>人工呼吸器・一本回路(回路用の人工鼻)=人工鼻>スピーチバルブの順で加湿されます。というよりスピーチバルブは全く加湿されないです。そして酸素投与を併用していると、加湿回路のついている人工呼吸器以外はより乾燥します。対策は加湿がされるデバイスをできるだけ長時間使用することです。(ただ徐々に人工呼吸器離脱に向かっていたりすると難しい事と思います)

⑺吸入の回数を増やす。生食吸入は一日の制限回数がないです。またスピーチバルブは2時間程度連続使用する毎に1回は吸入を挟んだ方がよいとの事です。この時ネブライザーを使用するのがベストですがなかなか外出時など音や物品の多さなどが問題でさっと使用できないですよね。そこで我が家はベビーミストをネブライザーが使用できない状況下であれば使用しています。

ベビーミストの使用の仕方はこちらを参照ください。

以上が我が家で行っている対策です。(実はパーカッサーやカフアシストも利用していますがそれはまた今度にします)当たり前の事ばかりですが、やってないという事があれば一度試してみてくださいね。私が一番効果あるかなと思うのは頻回の吸入と水分摂取、長めのお風呂という根本的なものです笑

もし行っている対策でこういうのはどうですかとか、これがいいですとかあればぜひ教えてくださいね。

  • この記事を書いた人

おkら

呼吸器内科医。産後育休を取らずに仕事復帰したものの1歳を過ぎたころダウン症の息子に在宅人工呼吸器が必要になり保育園退園→介護休業→介護休業使い切り退職→研究職。いつか臨床に復帰したい。今の目標は息子に色々な経験をさせること。

おすすめ記事一覧

1

以前に難聴の疑いのままでしたと言う記事を書いてその後何にも書いていませんでした。うちの子の難聴→難聴 ...

2

2020年11月1日(日)に第2回ダウン症学会学術集会がありました。テーマは『ダウン症研究と移行医療 ...

3

クラリスをずー-っと飲んでいるお子さんはいませんか?クラリス(クラリスロマイシン)を長期で飲む理由は ...

4

おけはダウン症で咀嚼・嚥下が苦手かつ気管カニューレが入っていることで嚥下障害があります。そしてママは ...

5

今気になっていることの一つに息子の傷痕のことがあります。 今息子は気管切開をして人工呼吸器をつないで ...

-医者として, 医療的ケア

© 2024 じょいく児。 Powered by AFFINGER5