ダウン症

【出生前診断】NIPTを受けるか受けないか【羊水検査】

我が家の長男はダウン症です。息子はかけがえのない存在ですし、世界で一番愛しています。そもそも息子にも兄弟がいると楽しくっていいなという気持ちで下の子を希望しました。けれども第二子にあえてダウン症や先天性疾患の子供を希望するかというとそうではないというのが私の本心です。

息子をダウン症を否定するわけではないですが、第二子にはできれば健康であってほしいと願っています。そもそもダウン症でなければ息子ではないのか、ダウン症は息子の一要素であってダウン症だからどうとかではないのかもしれません。けれども息子はダウン症という事で3歳を手前にしてやはり本人は私の想定される一般の子どもより多大な苦労をしています。もちろんもっと苦労をしている子がいるのもわかっていまし、苦労自慢をするわけではないですが、やっぱり自分の子供がつらい苦しい思いをしていることは申し訳ないつらい気持ちになります。すでに息子は34年間私が経験したよりたくさんの回数の採血をしていますし、私は経験したことのない手術も経験していますし、入院の回数も息子の方が圧倒的に多いです。私は風邪をひいても酸素がいるほど苦しくなったことはありませんが、息子は高度の医療機器で酸素投与をしないといけないほど息が苦しくなったことがありました。今は幸いにも保育園に入園できましたが、人懐こい子なのになかなか入園を許可されず、集団に入れてもらう事ができませんでした。ではだからと言って命の選別をしていいのかといわれるとわかりません。この文章を書きながらも結論はでません。もちろんNIPTはあらかじめ染色体異常を検出する検査なので場合によっては堕胎も考慮に入れた検査です。逆に言うと堕胎が選択肢に入らない(つまりどんな結果であっても産むと決めている)方には必要ない検査なのかもしれません。私もその気持ちで一人目、つまり息子の時は検査をしませんでした。そしてエコーで分かる異常はありませんでしたので産まれてきてから息子がダウン症と知りました。産まなかったらよかった、おろせばよかったなどかけらも思ったことはないです。産んだ子が息子でない方が嫌です。今の息子を愛しているのは誰に誓ってもいいのですが間違いありません。私は医師で、小児科医ではありませんが、初期研修の途中まで小児科志望でした。(どうして小児科をあきらめたのかはまた別の記事で)ダウン症を深く知っているわけではありませんが、全く知らないわけでもなく、産まれてきた自分の息子がダウン症と分かったときはやはりショックでした。そして、息子が成長するにつれて知ったことや、産まれてから情報収集したことで知った新たな事を、あの時ダウン症と告知された時知っていたら、さらにショックだったと思います。ポリクリでNICUをローテーションしていた時、たくさん先天性に障害を抱えている子が入室してきていてその中で産まれてきた子がダウン症であったら「ああダウン症か、まだよかったね」と浅はかに思っているようなそんな学生でした。

NIPT(非侵襲的出生前診断)は二人目を希望したときに授かったら受けようと夫と決めていました。さらに今回初期のエコー検査でNT(胎児頚部透亮像)を指摘され羊水検査を受けようとも思いました。羊水検査を絶対に受けるのであればNIPTは不必要と思いますが、もし、NIPTが陽性だった際、その後の事への心の準備のために受けようと決めました。NIPTが陰性であれば羊水検査を受けないというのであればNIPTを受ける意義はあると思います。繰り返しますが羊水検査を絶対に受けるのであれば、NIPTは検査結果が時期的に早いという以外の意義はありません。そんな無駄な部分が多い検査と分かって受けました。羊水検査に関してはNIPTとは違い侵襲的な検査なのでますます迷いましたがそれでも受けました。

そもそもは陰性を確認したくて検査を受けようと思っていたところで今回NTを指摘され、その最も高確率のダウン症を確認したくて受けることにしました。陰性でしたが、私は“幸いにも”陰性でしたと言っていいのかもわかりません。命の選別をしたいわけでもなく、息子に包括されたダウン症を否定したいのでもなく、産まれてくる子供にどうか負担が少ないといいと思っての事です。あとは、子供のためと言いつつ、自分のためもあるかもしれません。たとえ気管切開といういわゆる小手術ですら自分の子供を手術室に送りだすのはつらかったです。もっともっと大きな手術をしている子もいるのに自分の子がもし、これ以上の大きな手術やそれこそ命のはざまに立つような治療をうけるとなった時自分は耐えられるのかと思い、それを想像できないという部分もあると思います。きょうだいとして息子を支えて欲しいという打算もあるのかもしれません。でも、おなかの子の出産する可能性のある時期すべてにパパのオンコールや当直を外すのはあまりに困難で計画出産も検討しているような有様(息子は現在人工呼吸器管理が必要なので特に夜間は預けるや誰かに助けて見ていてもらうがかなり難しいです)で、おなかの子も頻回に入院が必要になった場合、息子もおなかの子もどうしたらいいのでしょうか。

また今回NIPTは陰性でしたが、陽性であり羊水検査でも陽性、つまりダウン症(またはその他の疾患でも)であると分かった場合、私は堕胎を選択出来るのかもわかりません。息子はまだ手術を二つは控えていますし、療育に連れて行ってあげることで伸びる事もわかっていますし、その後も私が時間をいわゆる定型の子より使う事で伸び率が上昇する子であると思います。もしかすると二人目の子も同様の手のかかる子であれば、息子の成長の妨げになってしまう可能性も否定できません。でも息子の時と同様、授かった命であればたとえ何があろうと精一杯育てたいし、最大限幸せにしたいという気持ちも本当です。

何が正解かわからないですし、私としてはNIPTは受けない、羊水検査も受けない、どんな子が産まれても育てるを実践できる人であればなと思いますが、実際はそうではないです。というわけで悩んで悩んで、しかも検査の結果が出た場合どうするかを決めて受けるようにというコウノドリ先生のアドバイスを無視し、結果を聞いた後自分たちがどう行動するかわからないままNIPT検査を受けました。特に結果説明は緊張しましたし、結果を聞いて自分がどう選択するのかを想像するのも怖かったですが、私が一番怖かったのは、羊水検査後おなかが張り(多分程度の差はあれ検査を受ければほぼ全員あると思います)、破水して流産になってしまうのではないかと、これが一番怖かったです。だったらそもそも検査を受けるんじゃないよという話ですが。

ただ、息子の遺伝外来(染色体異常や先天性疾患のNICU卒業生の子専門の外来)の主治医の言った言葉が私の中でもっともしっくり来ている、出生前診断というものへの考えです。

「先生、次の子は出生前診断を受けるか受けないか迷っているんですがどう思いますか」と先生に何か助けになる(自分の罪悪感が軽くなる)意見を言って欲しくて少しすがるようにこう聞くと

「NIPTは受けても後悔するし受けなくても後悔するから」と。一聞くと十答えてくれる先生が珍しくシンプルにこういう風に言いました。私はこれが真実だと思っています。

  • この記事を書いた人

おkら

呼吸器内科医。産後育休を取らずに仕事復帰したものの1歳を過ぎたころダウン症の息子に在宅人工呼吸器が必要になり保育園退園→介護休業→介護休業使い切り退職→研究職。いつか臨床に復帰したい。今の目標は息子に色々な経験をさせること。

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