ダウン症 嚥下機能障害 言語聴覚療法(ST)

ダウン症児、かみかみできるぞ

離乳食は果敢に5か月ごろから開始したもののずーっと初期食。徐々に味や食品は幼児食にはなりましたが形態はペースト食。何とか刻み食も食べられるねとなった2歳1か月のころ、摂食外来で1㎝くらいの大きさのものをトライしてみようと言われました。

息子の長――――――いペースト食から刻み食までの過程はこちら↓

そしてそのころまで気管軟化症で気管切開をしている息子はすべて人工呼吸器装着しての摂食でした。呼吸状態からは睡眠時と食事時以外は人工呼吸器も徐々に離脱していましたが、誤嚥の危険が高く人工呼吸器の摂食時の離脱が難しい状態が続きました。しかし徐々にむせや痰の増量も減り、時間制限ありですがスピーチバルブでの摂食可能になったのがその1か月後くらいでした。そしてそのころから普段のスピーチバルブの装着でも長く過ごせるようになってきており、呼吸余力が出てきていたのだと思います。さらに約1月後、気管支鏡検査で夜間以外の人工呼吸器装着はなくてもいい(つまり呼吸状態からは食事時は必須でない)と言われ、さらに食事も摂食外来でスピーチバルブでもむせがなさそうなので時間制限なく食事時使用可能と言われました。呼吸器の設定もだんだんと離脱方向へ移行しても体調に変化はなく過ごせていたので、この3-4か月は摂食の変化というより呼吸の余力が増えてしっかり嚥下できるようになってきたのだと思います

さて最近、嚥下機能評価医の資格を取りました私、よくよく息子の食事の様子を見ますと、呼吸状態がよくなった事で嚥下が改善したものの、咀嚼が「嫌」という印象でした。

それまでは人工呼吸器のアラームが鳴ったり、痰を吸引したりとそこまで集中して見れていなかったのが、スピーチバルブになったことで落ち着いて観察できました。取り込みから咀嚼・食塊形成・移行・嚥下と分けてみてみると、どうも咀嚼が苦手?やりたくない?状態の様でした。

ただ、咀嚼がパワーとして足りないわけではないようで、噛む持久力がなくて嫌なのか、噛まなくていけないような固まりの食品の食感が嫌なのか、噛んで出てくる味が嫌なのかよくわかりませんでした。

このあたりで、保育園の入園問題などあり、私が大変忙しかったりしたこともあり、機嫌のいい時にさいころ状の好きな物を時々提供するだけで、本人もやりたくないようですし毎回嫌な思いをするのもと思いほぼ変化のない状態でした。ただストローでの飲水が可能になっていたので食形態のアップには至らなかったものの、あとから考えますと口の使い方は上手になってきていたのだと思います。

そして、紆余曲折あり保育園へ入園しました。慣らし保育中は個室での食事で、あまり集中もできず何とか食べられるものだけ食べてという状態でした。慣らし保育最終日、区の保育課の職員の許可をもって他の園児の子と同室で食事が食べられることになりました。その後、慣らし保育は終わり直接見ていないのでなんとも言えないのですが、連絡帳に主食:完食、副食:完食と書かれて帰ってくることが増えました。体力もついてきているねと、発達支援に行く日は夜寝るためにお昼寝の時間を短くして欲しいと伝えたころでした。

そして園で食べられていると言うのでご飯を大人の柔らかめ程度(ここで初めて加水なし、炊飯器から直接息子のお椀にご飯をよそう事ができました)にしたところこれも摂食可能でした。

その後1か月半ほどしたところで、気が付いたことは、

  • 食事への集中力が上がっている。
  • おなかが減っていると訴える事が増えた。
  • 食事の量が増えた。
  • スプーンに手を伸ばし、自分でやろうとすることが増えた。 

環境もあるのかなと、チャレンジでお子様ランチを食べに行ったところ、何とほとんど食べることができました。そしてオムライス、焼きそばなど大人と同じものも徐々に挑戦して食べられる様子でした。

結果、息子にとって大きく影響したのは

  1. 呼吸状態が改善し、嚥下の際の息止めが負担でなくなった。
  2. 邪魔な呼吸器が外れたことで、食事への集中力が増した。
  3. 周りの子と同じように食事をしたいと思うようになった。
  4. 体力が付いた、体幹がしっかりしたことで咀嚼の持続力もついた。
  5. 運動量が増え、おなかが減る事が増えた。
  6. 食形態の改善とともに、色々な見た目の食事が出てきて楽しくなった。

だと思います。今はあんなに使用していたハンドミキサーをほとんど使用しなくなり、外食や買ってきた出来合いという選択肢が出来たことが本当にうれしいです。

今思うと、息子が食事をするときはいつも同じ場所で同じような見た目の食事。同じようなメニュー。親は後で別メニューを食べていましたので、同じものを食べている人はいませんでしたし、さらに息子と同時に食事している人はいませんでした。本当は同じメニュー(形態はどうしようもなかったですが…)で両親のどちらかでも一緒に食事をしていれば息子はもう少し楽しく前向きに食事に向かい合えていたのではないかなと思います。ただ、食形態の変化がなく、ぱっと見は停滞していた時期も実は慣れるという意味で必要であったのではないかなと思っています、説明が難しいですが、ペースト食を食べる事も以前よりうまくなっているように思います。

結局我が家は保育園に助けられた形となりましたが、まだまだ「つかみ食べ」「かじり取り」「スプーン」「フォーク」「はし」「固いもの(といっても唐揚げ位)」「麺類」「汁物」など課題はたくさんあります。結局、自分自身に言える事は焦らないです。『小学生になったとき、みんなと同じ給食を本人が困る事なく食べられるようになっている』が目標なのは変わらずに、何より『丸のみだめ絶対』ですので、時には進むより止まることの方が大事なこともあると思って頑張ろうと思います。

  • この記事を書いた人

おkら

呼吸器内科医。産後育休を取らずに仕事復帰したものの1歳を過ぎたころダウン症の息子に在宅人工呼吸器が必要になり保育園退園→介護休業→介護休業使い切り退職→研究職。いつか臨床に復帰したい。今の目標は息子に色々な経験をさせること。

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