医者として

移行医療

2020年11月1日(日)に第2回ダウン症学会学術集会がありました。テーマは『ダウン症研究と移行医療』です。
コロナ渦の影響でオンデマンド開催でした。
①乳幼児口腔分科会
②移行医療分科会
③基礎分科会
④学齢期分科会
の4つのセッションがありました。
はじめて知ったことや覚えておきたい事をまとめておこうと思います。

と書いて、口腔ケアのみだけ記事にしていました笑。その後再就職などして、完全に嚥下のところを忘れていました。
後々書いていこうかなと思います。

今日は移行医療に関しての移行される側の医師(成人期の医師)が思う問題点に関してです。

移行医療は定義は医療の進歩により小児期発症慢性疾患患者の多くが、思春期・成人期を迎えるようになりました。
これらの患者に対し、成人後も小児診療科だけで診続けることは、必ずしも最良の医療を提供出来ているとは言い切れません。“こども”から“大人”へと自立していく患者が、適切な医療を生涯に渡り受けられるように、小児診療科から成人診療科へとシームレスに繋げていくことです。移行期医療と言ったり期間にとらわれず移行するということで移行医療と言ったりします。
移行医療の担い手としては①小児科医・コメディカル②成人科医・コメディカル③患者と親です。
現在問題視しているのは患者・患者家族と小児科であって、実際成人科の医者は問題視していない事、です。知らないので。
そしてこれは私(成人専門の内科医です)の実体験であるのですが正直、医療ケア児の体が大人になったとき、成人期の医者にとっては大変な負担です。既往歴が多い、医療歴が多い(たとえただの肺炎でも耐性菌が多かったり、アレルギーが多く抗生剤の選択肢が少ない、病棟の感染対策が困難。自分でケアができないから高齢者と同じ対応になる、治療的の詳細が古くてわからない、あまりに膨大)、小児科と同様の親から聴取しないといけないなど、そして小児科と成人ではやや治療方針が違ったり。。。。そして小児疾患は知らない。どんなことに気を付けたらいいのかわからない。こんな感じで、以前勤めていた病院でもどこで治療を受けるのがいいのかと問題になっていました。つまり、誤解を恐れずに言いますと『成人期の医師で小児疾患既往患者や染色体異常患者をすすんで診察したい医師はいない』と思っています。だってダウン症児を診たい医師は小児科医になりますもん。心疾患としてのフォローは循環器内科がしてくれると思います。喘息のフォローは呼吸器内科がしますよ。けれど小児科みたいな、いわゆる全身を把握して、どの専門科にかかったほうがいいねと指示するコマンダーの科(主科)はないです。総合内科という科がありますがこれは別に成人期の患者を総合的に診るわけではないです。

と長々と書きましたが、小児科では成人の患者を診るのはむずかしい(ベッドや医療機器のサイズ問題も含め)ので小児科は困っていますよ。成人科に移行したいし、移行すべきだけど患者も患者家族も成人科の医師も準備できてませんよ。というのが現在の問題です。一応①転科(トランスファー)、②併診、③小児診療科の継続と三つ選択肢はあるようですが、今の現状ではみんなが③を選んで困っているって話ですんもんね。私としては②を数年から10年ほど続け①に移行するのがいいと思っています。

そしてこの学会に参加して思ったことは患者家族と患者本人を小児科医からお話して説明説得同意(基本的に嫌がる患者が多いと思います)を得るためのプロセスに関しては話し合われていましたが、成人科に紹介してもみんながみんなみんな承知しましたお任せくださいというとでも思っているのかな、でした。(だいぶ口が悪くなっています)
患者も患者家族もそもそもは慣れた医師(小児科医)のほうがいいし、でも体は徐々に成人になり成人科のほうがきちんと診察できるとはわかっているが成人期の医師も慣れた小児科医ほど手厚く対応できるわけではない状況で手を挙げて移行医療に取り組みたいという医師が何人いるでしょうか。。。。私は息子が成人したときがかなり不安です。

というわけで、移行医療を引き継ぐ側の成人期の医師にも何らかの研修を受けさせてもらえないか、学会で質問しましたが、学会などで聴講するので十分と言われました。。。十分じゃないから聞いているのにな。成人科の医師の不安としては繰り返しにもなりますが本人からの訴えの聴取が難しい、持病のない患者と比較して何に気を付けて診察したらいいのかわからないです。発達障害のある人を診察したことのない医師も多いでしょう。しかし、まあ発展途上なのでしょうがないです。

あまり文句ばっかり言っていてもしょうがないので、勉強してみました。長くなったので次へ。

2021/4/25 追記 ダウン症候群のある患者の移行医療支援ガイド

https://t.co/yTjWUxXAPb?amp=1

  • この記事を書いた人

おkら

呼吸器内科医。産後育休を取らずに仕事復帰したものの1歳を過ぎたころダウン症の息子に在宅人工呼吸器が必要になり保育園退園→介護休業→介護休業使い切り退職→研究職。いつか臨床に復帰したい。今の目標は息子に色々な経験をさせること。

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