クラリスをずー-っと飲んでいるお子さんはいませんか?クラリス(クラリスロマイシン)を長期で飲む理由は一つだけじゃないんです。
クラリスロマイシンはマクロライド系抗菌薬のひとつです。マクロライドは肺組織及び細胞内への良好な移行性を示しています、成人だけでなく小児でも使用可能です。マクロライドはびまん性汎細気管支炎に対して少量長期投与療法による有用性が広く知られています。因みにこのマクロライドの長期投与というのはかなり例外的で基本的に抗菌薬を時間制限を設けずダラダラと使用し続けるのは医者としては禁忌です。耐性菌というものが必ず出てきます。しかし、このマクロライドの有効性の機序に関しては抗菌作用で汎用なく、サイトカイン産生や気道分泌抑制など生体側に作用して抗炎症作用を示すとともに、菌側に働きかけてバイオフィルム産生や quorum-sensing機構を抑制する作用が関係していると言われています。
気管気管支軟化症のhigh PEEP療法のために気管切開をしている息子は、気管カニューレというデバイスが体に入っています。胃瘻や腎瘻、CVカテーテルなどもそうですが、体にとっては異物です。どんなに気をつけても血流がない以上免疫機構が働きにくく感染の温床になりやすいです。その時デバイスに引っ付いたリポ多糖と菌の塊がバイオフィルムです。
これは物理的に剥がすしかないですので、デバイスの交換を定期的に行うしかないです。閉塞しているわけでもないのに交換するのはこのためです。体内に埋め込まれているデバイスの感染はどんなに抗菌薬で戦っても効果なく、一度感染してしまったら交換するしかありません。体に埋め込まれているデバイスで代表的なのはCVポートやペースメーカー、人工弁などでしょうか。
というわけでデバイス感染の予防や進行抑制のために息子はクラリスロマイシンを毎日二回内服となっています。その他、気管気管支軟化症に特化した理由があるのかもしれません(おそらく排痰作用ですが、根拠は見つけられず)がまた今度探すことにします。他の疾患でいうと、小児では難治性気管支喘息児へのマクロライド少量持続投与は81.1%に効果が認められたとありました。