外来をしていると、新薬が承認された直後は『新薬を使って欲しいです』と言われることがあります。
もちろんその患者さんによってはその新薬のちょうど適応になる方もいるが、
大抵の場合
(保険承認上)使えない。
(ある程度効果はあるだろうが既存の治療の方が効果が高いから)使わない。
です。
新しい薬だからいいんでしょうという考え方のようです。薬そのものがある病気に効果はあるんでしょう。そうでないと承認されないはずです。効果がなくて淘汰されていく薬は無限とあります。承認されたからにはある程度の効果とそして耐えられる程度の副作用なのでしょう。しかし、既存薬に比べていいかというとそれはまた別の話です。標準治療でない可能性は多分にあります。標準治療で効果がなかった、なくなった、副作用が酷くて続けられない場合の代替薬だって大事です、もしかしたら新薬がこれなのかもしれません。
特に最近、免疫療法だの、光免疫療法だの、やれサーモプラスティだのくらいオバイオプシーだの。(すみません、いい薬治療薬検査もあります)新しい治療法新しい薬ということは長期間たくさんの使用経験があるわけではないのでわかっていないこともたくさんあります。かなり経ってから起こる副作用があったりや開発治験の段階で使用されなかった持病のある人では副作用が強く出たりということはよくあります。
もちろん全ての新薬がそうなわけではありませんが。
ただしまれに新薬はこれぞという人に使うと劇的な効果、なんと副作用もほとんどないというものもある。新薬じゃなくてもある。ただしこれぞという人でないといけない。これぞという人なのかをしっかり確認して頂きたい。
ともかく、新しい薬・新しい治療法が出た時、すぐに手を伸ばすのではなく。自分に合っている薬治療法なのかと、今までの薬治療法と比べてさらに効果があると言われているのかを確認することが大事です。ただし、それを判断・提案・説明するのは医者なので別に調べて病院に行かなくちゃいけないとかいうことは全くありません。
しかし、新薬や新治療がマスコミで取り上げられるとそれに固執する方もいてなかなか医者も困っちゃっていますよという話です。
オプジーボが出た時もなんと肺がん1期で!8-9割は手術だけで治るのにもかかわらず、どうしてもオプジーボをやりたいとおっしゃっられた方がおりました。そりゃあ宝くじの確率よりは高い確率で治るかもしれないですけど、圧倒的に治る可能性の高い治療が確立されているのにそれをやるメリットはないし、有害事象で致死的になるかもしれないしと思うわけです。その患者さんは納得されて、再発したらオプジーボをやってくれと言われましたが、再発はして欲しくないですし、しませんでした(一番治る可能性の高い治療=手術を受けましたので)。しかし、他の先生にかかった患者さんではそれでもやりたいおっしゃり、保険上できないと言ったら他の民間医療をしているところに通われたそうです。。。もう新薬という宗教に勧誘されたんじゃない?とその時は言っていました。
そんなわけで、必ずしも新薬がいい(効果が高い)わけではないよという話でした。なのでコロナ関連もよくよく確認してくださいね。こういう無茶苦茶治験が早くて承認が早いものは特に使用開始されてから、毒性報告が上がって使用中止になることが多いような気がします。特にコロナは利権も絡んでるでしょうから。
※補足で書くと、光免疫療法は頭頸部がんの患者で、1回以上全身療法(プラチナベースの抗がん剤)を受けた患者で2治療以上既に受けている再発限局または局所進行の頭頸部がん(扁平上皮癌)の患者で医師の選択した治療と光免疫療法を比較して効果が高いかどうかの治験をやっており、まだ結果は発表されていません(2020/9/29現在)効くは効くんでしょうけどね、今までの治療より良いかはまだ発表されていないです。